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痛風男の備忘録
怪異譚に憑りつかれた、或る男の半生を綴ります。
幼い頃の記憶 其之一
私が寝起きしていた二階の部屋は、
霊能者曰く、『霊道』なのだそうだ。

幼い頃、この部屋でよく遊んだが、
未だに不可解な点がある。

まずこの部屋は、
昼夜問わず白い光に満ちていた。
曇りの日でも、薄ら明るいのである。

『高い高い』をしてもらった覚えがある。
その時、誰が私を抱えてくれたのか?

全身黒ずくめの男・・・正確には
黒い影が立体化した男。

私達兄弟は、その黒い男に抱きかかえられ、
天井すれすれまで上げられた。

ただ正確に誰だったのか?
未だに解らず仕舞いである。
実家の事情 其之三
実家の階段は、怪異に満ちていた。


よく階段を昇り降りする最中、
『ぐにゃ』という感覚を足が覚えたので、
下を見てみると、
階段にめり込んだ顔があった。
その顔は、いつもやけににんまりと
していたのであった。


一階の部屋で寛いでいると、
突然洗面所の水が流れ出したので、
何だと思いそちらへ向かうと、
二階から見覚えのある男が、
階段を駆け下りて来て、
そのまま台所へ消えた。

翌日、親戚の叔父が亡くなった
との連絡が入った。



以前一時期ブログをやっていた事がある。
その時、某怪奇タレントの目玉話の解析を
web上で行っていた時。

階段を降りる途中で
件の話の女の子が登場した。

私はその女の子に両足首を摑まれ、
そのまま階段をずり落ちた。


そんな過去がありました、と言うお話。
バラック
既に御存知の通り、
筆者は所謂“寺町通”で育った。
家の隣が墓地、
そんな事は近所では当たり前だった。


そんな中、
子供の頃から何かと話題の物件があった。
『バラック』
そう呼ぶに相応しい掘っ立て小屋が、
近所の或る寺に隣接する形で存在した。

此処には片目が不自由なお爺さんが
一人で住んでいた。
何時もリヤカーをお供に、
何処からともなく廃材を集めて来ては、
バラックの資材に充てていた。

或る時、市役所の役人が訪ねて来て、
お爺さんの身寄りを尋ねたらしいが、
彼は天涯孤独のようだった。


私が幼い頃、一度だけこのバラックに
友達と一緒に探検に入った事があった。

薄暗い室内は、地面が剝き出しで、
男一人が生活する為の最小限の物しか
置いていなかった。

ただ一つ気になったのは、
部屋のあちこちに割りと大きな石の塊が
置いてあった事だ。

その雰囲気に負けて、
バラック探検は数分で終了した。


暫くして、バラックの住人が亡くなった。
身寄りの無いお爺さんのその後が気になったが、
それより驚いたのは・・・。

『家の墓が見当たらないのだが、どういう事か?』
バラックに隣接する寺の檀家が、
寺側を問い質したそうだ。
それまで墓参りに一度も来なかった檀家も
どうかと思うが。


兎に角、檀家の要請もあって、
バラックはいとも簡単に解体された。
そして・・・

その跡地から、数基の墓石と地蔵が発見された。
あの時の大きな石の塊は、どうやら墓石だったらしい。

寺町通ならではのエピソードである。
黒い人
高校生の或る冬、
郵便局のアルバイトをした事があった。
要は年賀状の配達補助である。

配る地域は自宅周辺に限られたので、
土地勘のある人なら誰でも出来る仕事である。

それでも初日は、局員の人が付き添ってくれて、
配達地域の確認をしたのであった。

大体の箇所は理解出来た。
ただ一カ所だけ・・・


局員がバイクを降り、
『この奥だから』
と私を案内した。

住宅街の細い路地を進むと、
突然視界が開け、広い土地が現れた。

そこには平屋建ての集合住宅と
二階建てのアパートが存在した。

『ここも配ってもらうから』
局員の簡単な説明の後、
私達は現場を後にした。


暫く仕事を続ける中で、
どうしてもそのアパートが気になっていた。
尋常ではない雰囲気を醸し出していたからだ。

そんな或る日、
いつものように仕事をしていると・・・


その場所は靄が立ち込め、
異様な雰囲気に包まれていた。

何時もの様にアパートに向かうと、
そこには在る筈の無い部屋が存在した。

暫く様子を見ていると、
音も立てずに一番奥の扉が開いた。


『黒い人』
性別や年齢は大体解る。
ただそれは影を立体化した者だった。

ふと目が合った気がした。
彼が此方へ近づいて来たので、
慌てて私は現場を後にした。


その後、配達中、
やたらと犬や猫といった小動物が、
私を見て吠えるようになった。

配達に使う自転車も後部がやけに重い。

何だろうか?と思っていた或る日・・・


突然、自転車が制御不能となった。
ふと後ろを見ると、あの黒い人が座っていた。
自転車のハンドルをしっかり握り掴み、
私に運転させない態だった。

そして私は、出合い頭に乗用車と衝突した。

不思議な事に、掠り傷程度で済んだ。
事故処理に出向いた警官は、
『普通なら即死なんだけど・・・』
と首を傾げていた。

車とぶつかる瞬間、
何かの力が働いて、
私はブロック塀を掠る程度で済んだ。
その時、初めて先祖に守られていると悟った。


それ以降、
黒い人は私の周囲から姿を消した。
そしてあれだけ騒いでいた小動物達も、
一斉に吠えるのを止めた。

あのアパートには、
相変わらず仕事で通っていた。

或る時気づいた。
あの黒い人が出て来た部屋が在った場所は、
墓地だった。

もし興味本位で此方から近づいていたら、
間違いなく墓地に転落死していただろう。


教祖様
引き籠っていた頃の話。
大体20代だったから、今から約20年前か。

当時、自宅以外で出掛けると言えば、
深夜のコンビニくらいだった。


その夜も例の如く、
近場のコンビニへと出掛けたのであった。

暫く歩いていると、
『う〜〜』と音が聞こえて来た。

何かしら?と思いながらも、
私は只管行きつけのコンビニを目指した。


もう暫く歩くと、
その音が人の声だと認識出来た。

『う〜〜』
相変わらず誰かが、
深夜の住宅地で何かを唱えている。


だいぶその音源に近付くと、
こんな深夜に一人の女が、
お経を唱えている場面に出くわした。

女は顔が無かった。
輪郭だけを残し、
綺麗に中心部が刳り抜かれていた。
下を見ると、足も無かった。

『う〜〜』
深夜の住宅街で、
教祖様、絶賛布教中であった。


興味本位で近付いたら、
『パン!パンパパパン!!』
足も無いのに、教祖様は音を立てた。

此方へ近づいて来たので、
私は足早にその場を後にした。


女が居た場所には、
元々大きな御屋敷があった。

或る時その御屋敷は
いとも簡単に取り壊され、
新たな持ち主を待っていた。

しかし・・・
不動産屋が入る度、
整地はことごとく頓挫した。
何年も売れる事無く、
御屋敷跡は放置された。

如何やら敷地内にあった神木を
工事業者が切ってしまったらしい。


『敷地から追い出された教祖様、
路上にて絶賛布教中か・・・』

アンモニア臭が漂う
不気味な住宅地を通りながら、
ふと思った20代の私だった。